決心を溶かす炎

ご飯鍋の蓋を割ってしまったお客様から 蓋だけ作って欲しいと依頼がありました。

 

難しい作業ですが お引き受けしました。

 

すでに本焼きして縮んでいる土鍋本体の直径を計って、これから縮む生粘土の直径を逆算します。

 

ろくろを挽いて 取っ手を付けて しっかり乾燥してから本体に乗せてみます。

 

残念! コレでは失敗です。 小さ過ぎました。

 

本焼きした本体にピッタリということは、蓋を本焼きすると更に縮まって ユルユルになってしまうということですから、

 

作り直しです。

 

 

本焼きの直径 × 1.05 ではダメだったので 今回は× 1.06としたのですが 次は × 1.065としてみます。

 

更に ろくろを挽いた時の粘土の水分量の違いで 縮みに差が出るのです。

 

乾燥時点で一度縮んで 本焼き時でもう一度縮みます。

 

ですから窯から完成品が出るまでは 蓋が合っているかどうかは分からないのです。

 

 

このミリ単位の仕事は とても神経を使います。

 

内蓋と外蓋の二枚の注文ですから なおさらです。

 

 

 

なかなか進まない作業をしていて、気が付くと1時や2時になってしまいます。

 

冷えた体で工房から家に戻ると 先に休む主人が私のために薪を多めに入れて 家を暖めてくれています。

 

オレンジ色の炎が 暗い部屋の中をゆらゆらと照らしています。

 

 

 

そして 「もう こんな依頼はお断りしよう・・・」 と思っていた決心など すっかり溶かされてしまいます。